2019年1月第2週目の近況報告

  • 近況報告

木曜から今まで高熱の出る風邪で倒れていたので何もできなかった。延々と寝ているのに治りきったとはいえないあたりに、この風邪の酷さが現れている。いまだにしんどい。

 

  • インプットの報告

上に書いた理由から映像の目標は未達成です。

本は移動中に読み上げて聴いていたのでそこそこ達成できました。今週読んでいたのは

・カール・イグレシアス・著+島内哲朗・訳「感情から書く脚本術」(フィルムアート社)

 

「感情」から書く脚本術  心を奪って釘づけにする物語の書き方

「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方

 

 

戸田山和久「恐怖の哲学」(NHK新書)

 

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

 

 

の二冊。

・「感情から書く脚本術」93%〜100%

・「恐怖の哲学」44%〜92%

合計58%読了も、目標の70%には届かず残念。

 

  • 感想

感想を書く余裕があまりない。とはいえせっかくなので少し書いてみよう。

どちらも半端に読んで放置していたんですが、ちゃんと読んでみると面白かった。

・「感情から〜」

この本は脚本の基本を押さえた中級・上級者向けの内容で、構成については少し触れるだけ、コンセプト作り、キャラクター、台詞上の駆け引きで観客(と下読み)の気を引くテクニックが書かれる。とりわけ面白いのが『羊たちの沈黙』の台詞分析ですね。人の秘密を食う魔人・レクター博士と主人公のFBI訓練生の女性が、ある容疑者の謎をめぐって駆け引きを行うんですが、レクターは容疑者に執着する主人公の秘密を暴こうとするんですね。このプロセスがえっちでした…。『羊たち〜』がこういう内容なの、早めに教えてくれ!と思いました。早めに見ます。

誰しも感情を動かされるためにエンタメを求めているところがあるので、具体的なテクニックが開陳されているこの本は、観る側としてエンタメに触れているだけでも面白く読めるはず。

余裕ができたらもう少し内容をまとめたい。

 

・「恐怖の哲学」

amazonの紹介文を読むとホラー映画を使った軽い哲学読み物なのかな〜というフワッとした印象を抱くと思いますが、そのような期待とは裏腹に読者はハードコアな意識と情動の哲学に誘われていくことになります。

この本はちくま新書で刊行された同著者の「哲学入門」の姉妹編というべき内容で、「哲学入門」を読んでいるとスムーズに理解できるかな、と思う箇所もありますが、ホラーという経験が題材になっているぶん、こちらのほうが取っ付きやすいと思う。

詳しい内容も書くべきなんですが、読了したらあらためて書きます。

一言だけ言っておくと、この本は科学哲学の自然主義(意識とか情報とか抽象的な概念を唯物論的に理解しようというプロジェクト)という分野の著作で、人間の意識や情動の「感じ」について科学知を動員しながら議論を組み立てていくので、「AI・ロボットの意識!とは!」みたいな議論が好きな人にはオススメです。まじで。読んでほしい。

逐一論点を潰していくので、少しダルく感じるかもしれないんですが、終盤で解説されている意識の表象理論というモデルが非常に好奇心をくすぐられます。意識の説明としてかなり納得できるものが出てきたな、という感想です。あとそう、この本の白眉は意識の表象理論を情動のシステムに応用したところにあるんだと思います。その議論もエレガントでいい。

 

本文中で参照されている表象理論の本(「ぼくらが原子の集まりなら〜」)や、

 


少し守備範囲の異なるデネットの「心の進化を解明する」もチェックしたいな〜と思った。

 

心の進化を解明する ―バクテリアからバッハへ―

心の進化を解明する ―バクテリアからバッハへ―

 

 

 

これは余談ですが、この本に志向的対象や「感じ」など現象学の語彙が出てくるので「ワードマップ  現代現象学」も取り寄せた。この本はかなり評判が良くて、他分野への応用例なども豊富で良い感じです。経験から論を組み立てていくので哲学の入門としてもいいと思う。

 

現象学というとフッサールハイデガーメルロ=ポンティ鷲田清一などフォロワーはたくさんいて魅力的な議論も多い。しかし同時に個々人のアクが強く、現象学概念の一般的な用例もよくわからない。概念の解説としては「縮刷版現象学事典」があるとはいえ、もう少し具体的な用法が知りたい、といったときにはこの本の出番、ということですね。

 

現代現象学―経験から始める哲学入門 (ワードマップ)

現代現象学―経験から始める哲学入門 (ワードマップ)